木曜日, 7月 31

出会いと再会


そうだ。
人の旦那さんを、僕が好きになってしまった。
いけないことだと分かっていながらも、僕には、この気持ちを抑えることが無理だ。

彼と僕は、同じ高校の先輩後輩という関係だった。
全寮制の高校だったため、国中から集まった一年生を、一刻も早く寮生活に馴染ませようと、責任感の強い彼は、我々後輩をいろいろと可愛がってくれた。

最初は、頼もしい存在の先輩だったが、知れば知るほど、気になっていった。
できることなら、彼と一緒にいたかった。いつか、僕の心の中に、彼の存在が。

けどそのとき、彼に告白することはなかった。
嫌われるのが怖かった。ずっと、このままの関係が続ければなと思った。

彼が高校を卒業する時は、正直悲しかった。
頭がよく、スポーツ万能だった彼は、高校を卒業してすぐ海外留学のオファーが来た。
その話を聞いた時、正直もう駄目かと思った。彼を諦めた。
彼との夢を、諦めざるをえなかった。

数年前、高校の同窓会で、再び彼と再開した。
高校を卒業して10年。まさかのことで、同窓会の後、近くのファミレスで朝まで話が盛り上がった。
その時に、彼が僕の会社の近くに住んでいることを知った。
そして、現在彼がすでに結婚していて、美人で、頭がよくて、キャリアーを持つできる奥さんがいることと、3歳になる娘を持つことも。

家族のことを話す時、彼は幸せそうだなぁと感じた。
ちょっぴりうらやましかった。
ちょぴり切なかった。

話の弾みで、高校時代のお互いの印象を話題にのぼった。
たいしたことないと思って、話のネタで、高校時代の彼に対する思いを告白しちゃった。
僕の告白を聞いた彼は、「うそーっ」と言い、大きな声で笑った。
「それは、そうよね。今はもう笑い話だよね」と自分を慰めた。
自分が格好悪いと思った。
やっぱり、告白するんじゃなかったと後悔した。
恥ずかしかった。

始発の時間になって、やっとファミレスを出て、駅まで二人で歩いた。
上り始めた太陽の暖かい日差しを頬で感じながら、駅までの距離がもっと遠ければなぁと何度も静かに神様に願った。
もう少しだけ、彼と一緒にいさせて。
もう少しだけ、彼の背中を目に焼きつきたいの。

駅の入り口で、彼が急に足を止めた。「どうしたの?」と僕が。
彼は、僕に振り向き、真剣なまなざしで僕の目をみて、こう言った。
「実は、僕も・・・君のことが、好きだった。」

自分の耳を疑った。

                                                                 ・・・つづく

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